グノシーは7月から8月にかけて、メディアプラットフォームのnoteとコラボする形で、初の記事コンテスト「#はじめてレッズをみた日」を開催しました。
オフィシャルパートナー契約を結んでいるJリーグ・浦和レッズとの新しい連携施策として実施。観戦体験をつづったnote作品を募集し、一部の作品をピックアップしてグノシーアプリに掲載しました。また、優秀作を選定し、スタジアムツアーに招待するなどのインセンティブも提供しています。
なぜ、このようなコンテストを実施したのか。
企画を担当した塩畑大輔がつづります。
みなさんこんにちは。株式会社Gunosyの塩畑と申します。
コンテンツの企画を担当しております。
私はかつて、スポーツ新聞社で浦和レッズ担当の記者をしていました。
加えて、昨年までnoteで働いていたというご縁もあり、ご両社に協力いただく形でコンテストを実施できることになりました。
コンテストのテーマ案はいくつかありましたが、今回は「はじめてレッズをみた日」とさせていただきました。
一番の理由はやはり、現地での観戦体験の素晴らしさ、多様さがもっと伝わってほしい、と思うからです。
スタジアムへの道すがらで感じること
スポーツの現場に足を運び続けて、もう20年になります。
駆け出しのころ、試合会場には乗用車で向かっていました。
ですがある時から、公共交通機関を使うようになりました。
観客の方はみなさん、それぞれに期待や思い入れを持って会場に足を運ばれている。
電車やバスのなかでは、家族や友人と話されている内容が聞こえてくることがあります。
チームの近況を話している方もいれば、特定の選手の魅力について語っている方もいる。
着ているユニホームに入っている背番号、選手名もまちまち。
期待も思い入れも、本当にひとそれぞれなのだと感じることができます。
これだけ多様な価値観を一様に受け入れる、スポーツクラブやスタジアムの包容力は並外れている。
いつもそう思います。
一方、ひとりの書き手や、ひとつの媒体だけでは、これだけの多様性にはなかなか対応できないとも感じます。
それぞれの方に、それぞれの視点で、観戦体験の素晴らしさを語っていただきたい。それが今回のコンテストに込めた一番の願いでした。
浦和レッズの番記者最後の日に記者席で(本人撮影)
忘れられない「悲しげな指摘」
かつての私は、チームや競技に寄せられる期待、思いの多様さに思いが至っていませんでした。
2006年、私は横浜F・マリノスの番記者をしていました。
当時、クラブには久保竜彦さんというストライカーがいた。その年に行われるワールドカップドイツ大会でも、日本代表のエースとして活躍することが期待されていました。
あるとき、久保さんがケガのリハビリを終えて、戦線に復帰することになった。
会社のデスクに報告すると「代表クラスの動きだから大きく扱うぞ」と言ってきた。私は張り切って、1本の原稿を書き上げました。
それを読んだマリノスのサポーターさんから、会社にお手紙が届きました。
「ものすごく悲しかったです」と。
記事の締めとして、私はこんなことを書いていました。
「日本代表への復帰も期待される。ワールドクラスの左足シュート復活を、国民が待ちわびている。伝家の宝刀を再び抜く舞台には、日本代表のピッチこそがふさわしい」
国民の期待に応える記事が書けた。
久保選手を大きく取り上げることができて、マリノスサポーターもきっと喜んでくれている。
当時の私は、そんな手応えすら感じていました。
それに対して、お手紙の主は淡々と、それでいて悲しげに指摘されていました。
久保選手は日本代表である以前に、マリノスの大事な選手ですーー。
なのになぜ、本領を発揮する舞台が、代表のピッチであるべきなのでしょうかーー。
電車の中で弾む会話。スタグル物色する笑顔
会社のデスクは「そんなことを言っても、記事のバリューを出すには代表視点しかない。それに、自分が応援する選手が代表で活躍するのは、みんなうれしいはずだろう。お前は間違ってない」と首を振りました。
でも私には、どうしてもそうは思えなかった。読む人の気持ちがわからない書き手に成り下がってしまったことを、深く恥じました。
取材現場に、できるだけ公共交通機関を使って向かうようにしたのは、この頃からです。
取材がない日もチケットを買って、専門外のイベントに足を運ぶ機会をつくるようにも心がけました。
当初はとにかく「ひとの気持ちがわかる書き手でいたい」の一心でした。
ですがほどなく、競技やイベントへの強い思い入れが、自分の中に芽生えてくるのを感じるようになりました。
担当クラブの代表クラス選手が活躍するかどうか。代表に選ばれるかどうか。
当時の私には、その視点しかなかった。応援するクラブでの活躍を願う気持ちを、なぜ軽んじてしまっていたのか。今となれば不思議ですらあります。
スポーツを楽しむ視点はたくさんある。
記者になる前は当然のように持っていた感覚を、遅ればせながら取り戻すことができました。
そのきっかけをくださったのは、他でもないファン・サポーターのみなさんです。
電車の中で弾む会話。ピクニックエリアを物色して回る笑顔。多様な楽しみ方をされているみなさんの様子をみることこそが、私にとってはかけがえのない学びでした。
※スタグル:スタジアムグルメのこと
みんなでつくる「観戦の文化」
相手がいないサッカーはない。
相手も勝つために必死だ。そこにはいつも敬意を払うべき。
イビチャ・オシムさんのお言葉です。
もちろん、自分が応援するチームが勝ってくれたらうれしい。
でも、相手だって勝ちたい。相手のサポーターも勝利を望んでいます。
勝ち負けだけで考えるとすれば。
サッカーファンの半分は、観戦に満足できないということになってしまいます。
でも実際には、多くのひとが継続して観戦を楽しんでいます。
勝ち負けがストーリーになって、思い入れが強まる、というのはあるかもしれません。
選手は悔しさをバネに成長する。みる側の皆さんも「次こそは」と期待する。このあたりは、取材する中でも強く感じたことです。
そしてもうひとつ、勝敗以外のところにも観戦体験の素晴らしさはある、というのも感じます。
楽しみ方の選択肢が多様であればあるほど、その競技はたくさんのファンを会場に受け入れることができる。
そうやって、会場が観客で埋まることで、劇場効果が生まれて観戦体験はさらに高まる。
観戦に不慣れな人々や、子供連れのファンなども来場しやすくなるように。
お互いの価値観を尊重する。みんなで観戦体験の素晴らしさを称え合い、多様な楽しみ方を世に提案する。
そうやって、スポーツの文化は広まっていくのかなと思います。
サポーターのみなさんがつくる埼スタの雰囲気、ぜひ一度現地で味わってもらいたいです(本人撮影)
「はじめてレッズをみた日」は8月31日をもって募集期間を終了しました。
たくさんの作品をお寄せいただき、本当にありがとうございました。
多様な楽しみ方を描いていただきましたが、一方であらゆる作品に通じるものもみてとれました。
それは「観戦は人生を変える転機になりうる」ということです。
見る人の心を揺さぶり、時として生き方自体も変える。
劇的な展開が起きた試合で。スタジアムを遠く離れた被災地で。取材者としていろいろな現場でみてきた「スポーツの力」を、今回のコンテストでもあらためて強く感じました。
スポーツが世の中をポジティブに変えていく、その一助になれるように。
グノシーはこれからも、スポーツが生み出す価値をさまざまな形で世の中に伝えていきます。
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