先日開催された『ALL HANDS』にて「GUNOSY AWARD 2026」にノミネートされた社員へのインタビューを、今回から3回にわたりお届けします。
記念すべき第1回は、新規事業開発室の井口さん。
困難に直面しても冷静に分析し、実装を通じて解決策を形にしていく姿は、まさに「サイエンスで機会をつくる」を体現していました。その取り組みの裏側を伺っていきます。

新規事業と歩んできたキャリア

― この度は、ノミネートおめでとうございます!まずは、Gunosyに入社するまでのご経歴を教えてください。

大学では経営学を学び、在学中に起業も経験しました。ビジネスの視点で物事を捉えることが好きで、学生時代はアプリ開発団体に所属し、先輩に教わりながら開発リーダーとしてプロダクトづくりにも取り組んでいました。
前職では新規事業の立ち上げに関わり、「机上の空論で終わらせず、動くものを世に出す」ことにこだわってきました。

― Gunosyへ入社後は、どのような業務を担当されてきましたか?

入社後は、グノシー事業部でサーバーサイドエンジニアとして開発に携わりました。その後、コンテンツ基盤のチームに移り、メディア向けの管理画面の開発などを担当していました。実はその頃から、社内向けの小さな新規事業にも少しずつ関わっていて、試行錯誤しながら色々と作っていました。約2年前に新規事業チームから正式に声をかけてもらい、現在の新規事業開発室にジョインし、そこからのピボットを経て、今のIR Hubチームにたどり着いたという流れです。

少数精鋭で「全部やる」IR Hub開発

― 現在のIR Hubで、井口さんの担っている役割について教えてください。

現在IR Hubチームのエンジニアが2名体制なので、”上流から下流まで全部やる”というのが基本スタンスになっています。課題の発見から、「こういう機能があったら良さそう」という企画・提案、技術的に可能かどうかの検証(PoC)、そして実装まで、一通りを担当しています。PoCの中には「これは全然ダメだな」と判断して捨てたものもたくさんあって、その中から生き残ったものだけが機能として実装されていきました。

― 半年を振り返ってみて、チームから期待されていたミッションはどのように捉えていましたか?

まずは「事業としてちゃんと成立させること」が大きなミッションだと考えていました。そのために、やるべきことが本当に山ほどあって、技術検証も、機能開発も、改善も、とにかくやれることは全部やるというマインドで取り組んでいました。
一方で、「やらないことを決める」ことも同じくらい重要だと感じています。毎日、営業チームからお客様の声や商談のフィードバックが上がってくるので、それを踏まえて優先度を更新し続ける半年でした。

「お客様のためになるか」を第一に

― やる/やらないを判断するときの軸は何でしたか?

判断軸はかなりシンプルで、「それがお客様のためになるかどうか」です。どうしても社内目線のことに意識が向きがちですが、「それって本当にお客様は嬉しいのか?」という点を一番大事にしています。場合によっては、「そもそもこのやり方じゃない方がいいのでは?」と、解決策自体を見直すこともあります。とにかく、お客様にとって価値があるかどうかだけを見る、という感覚ですね。

― そのこだわりが、プロダクトの前進につながったと感じた場面はありますか?

自分が企画段階から関わった機能を、お客様に「この機能、すごくいいですね」と言っていただけたときは、やっぱり嬉しいですね。単に作って終わりではなく、きちんと使われて、価値を感じてもらえたと実感できる瞬間です。そうしたフィードバックが、次の改善や新機能のアイデアにもつながっています。

議論の先に見えた、プロダクトのあるべき姿

― この半年、事業を前に進めるために、特に意識してきたことは何ですか?

自分としては、技術的な部分以外で意識していたことが大きいかなと思っています。コードを書くこと自体は”やるだけ”なので、それよりも、プロダクトをどうしていくかを決める議論や調整に時間を使いました。仕様が毎日のように変わる中で、本当にやるべきことに集中できるよう、チームでの議論を重ねていました。”やる必要のないこと”を一生懸命やってしまわないように、常に立ち止まって考えることを意識していました。

― モチベーションはどこから来ているのでしょうか?

「Gunosyで新規事業を成功させたい」という思いを、チーム全員が持っていると感じています。その共通の目標が、日々のモチベーションの源泉です。
エンジニアとしては、新しい技術を試せる環境であることも大きいですし、LLMなど最先端の技術に触れながらプロダクトを磨いていけるのは、純粋に楽しいですね。

開発スタイルも変えた「AIとのバイブコーディング」

― 開発プロセスについても、かなり変化があったと伺いました。

この1年で、開発のやり方は本当に大きく変わりました。最近は、ほとんど自分でコードを書いていません。エディタの横に出てくるチャットに指示を出してコードを書いてもらう、いわゆる「バイブコーディング」のようなスタイルで進めています。自分はコードを読みながら、「ここはこう直して」といった指示を出す側に回るイメージです。

― そのスタイルにしたことで、どんな変化がありましたか?

自宅では4枚のモニターを使って、複数の開発を並行して進めています。LLMが処理している間の待ち時間を別の作業に回せるので、少人数でも多くのことに取り組めるようになりました。新規事業ではPoCの大半が「やってみたけどダメだった」で終わることも多いですが、AIにコードを書いてもらうことで、失敗しても心理的な負担が小さくなります。結果だけ確認して、「これはダメだな」と思ったら潔く捨てる、というサイクルを高速で回せるようになりました。

最大の難所は「サービスレベルまで引き上げること」

― この半期で「ここが一番しんどかった」と感じたポイントはどこですか?

そもそも、事業としてまだ成功したとは言えない状態なので、そこに対するプレッシャーは常にあります。
今期で言うと、7月に公開したGunosyの決算説明資料を、IR Hubのファイル翻訳機能で自分自身が一番最初に翻訳してみたことが印象に残っています。ユーザー目線で実際にやってみたところ、想像以上に不便で、作業に半日ほどかかってしまいました。「まだ全然いけてないな」と痛感しつつ、そのときに気づいた点を数か月かけて一つひとつ改善していった期間は、しんどくもあり、学びの多い時間でした。

― LLMを使う上での難しさもあったとか。

LLMは、毎回違う出力を返してくるところが難しいです。プロダクトとして提供する以上、決まったフォーマットで返ってこないと、システム側が壊れてしまいます。パワーポイントのテキストを翻訳する際に、まったく違う形式で返ってきたり、空文字になってしまったりすると、そのスライドが壊れてしまう。その1%の「変な出力」を検知してリトライしたり、フィルタリングしたりする安全装置の部分は、試行錯誤を重ねながらひたむきに向き合い続けた半年でした。

解像度を上げるために、自分で手を動かす

― 新規事業に向き合う上で、大事にしている考え方は何でしょうか?

キーワードは「解像度を上げる」です。今やっているIR支援の領域は、もともと自分が経験してきた仕事ではないので、放っておくと分かったつもりになってしまいます。それを避けるために、ユーザーと同じ目線に立って、自分自身の手を動かして体験することを意識しています。決算資料の翻訳作業も、その一環として実際にやってみて、「翻訳そのものより、レイアウト調整が一番大変だ」という具体的な気づきが得られました。

― チームとしても、解像度を上げる工夫をされているのでしょうか?

はい。上司の有井さんがIRを兼務しているのも、その取り組みの一つだと思っています。実際のIR業務側を理解した上でプロダクトに落とし込むことで、より現場に刺さる機能が作れるはずだからです。お客様からのフィードバックでも、レイアウトまわりの悩みは多く挙がっているので、「やっぱりそこだよね」という確信にもつながっています。

開発だけでは終わらない役割へ

― 入社当初と比べて、仕事への向き合い方で変わったと感じる点はありますか?

入社当初はどちらかというと「サービスを安定的に提供するためにどうするか」という視点が中心でしたが、今は不確実性の高い新規事業を推進する上で、チームと毎日議論しながら「事業としてどう成功させるか」を考える時間が増えています。PoCの結果を定量的に共有したり、エンジニアにしか見えていない情報をきちんと出したりと、意思決定の質を上げる役割を意識するようになりました。

― 元々のバックグラウンドも活きていそうですね。

そうですね。経営学部出身で、学生時代に起業もしていたので、どちらかというとビジネス寄りの目線の人間だと思っています。
プログラミングは「自分の考えたものを形にするための手段」という感覚が強いです。技術は数年ごとに大きく変わっていくので、必要に応じて古いものは捨てて、新しいものを取り入れていけばいい。そうやって、より早く、より良いものを作れるなら、手段は何でもいいと思っています。

議論を重ね、無駄なく進むチームづくり

― チームメンバーに支えられていると感じるエピソードはありますか?

毎朝の朝会は、本当に議論が活発で、長いときは2時間ほど話している日もあります。職種を問わず、営業もデザイナーもエンジニアも一緒になって、「このプロダクトをどうしていくか」を徹底的に話し合っています。営業チームからは、お客様の生の声や商談のエピソードを共有してもらい、デザイナーとは「こういう体験のほうがいいのでは」といった議論を重ねています。テキストだけで完結させず、ミーティングの場以外でもクイックにcallして話すことで、手戻りを極力減らすようにしています。

― 少人数だからこそ、無駄をなくす意識も強いのでしょうか?

そうですね。2人で開発していて、余裕もまったくないので、無駄な作り直しは絶対に避けたいです。「これで本当にいきますよね?」というところまで最初に詰め切ってから作り始めるようにしています。その分、仕様検討や議論の時間はどうしても長くなりますが、後から大きく作り直すよりはトータルで効率的だと感じています。ユーザーにとって一番よい機能を届けられるように、チーム全員で考え続ける文化ができてきました。

「人がやる面倒くさいことは、全部AIがやる世界」に向けて

― 今後、Gunosyで成し遂げたいことを教えてください。

チームとしては、まずはIR Hubで単月黒字を達成することです。会社の収益の柱と言えるレベルの事業に育てることが、今の一番の目標です。そのためにも、今期は正念場だと思っています。
世の中的には、「人がやる面倒くさいことは全部AIがやる世界」になってほしいと考えています。今はエンジニアリングの領域から、その世界に少しでも近づけるように試行錯誤している段階です。いかに少ない人数で事業を回すか、というチャレンジを通じて得た知見を、将来的には他職種にも広げていきたいです。 IR支援のようなBtoBのサービスを通じて、お客様が「人がやるべき仕事」に集中できるような環境を作っていきたいですね。

― 残りの半期に向けた意気込みを教えてください。

導入企業を今より倍以上増やしていくために、考えられる打ち手はすべて試していくつもりですし、「この機能があればいけるかも」という仮説を何度でも持っていきたいと思っています。来期は、自分以外の誰かが新規事業からノミネートされるような、良い流れを作っていけたら嬉しいです。

【profile】井口さん 新規事業開発室

大学では経営学を学び、在学中の起業やアプリ開発団体での活動を通じてプロダクトづくりに携わる。前職では新規事業の立ち上げを経験し、2019年にGunosyへ入社。グノシー事業部での開発を経て、現在はIR Hubの中核エンジニアとして、翻訳機能の開発や品質改善、AI活用など幅広い領域で事業成長に貢献している。

〜今日から実践できる、仕事を前に進めるヒント〜
井口さんへのインタビューを通して見えてきたのは、特別なスキルや派手な工夫よりも、日々の仕事の中で積み重ねられてきた判断や行動でした。
仕事を前に進めていくためには、こうした向き合い方が一つのヒントになるのかもしれません。

1. 判断軸をひとつ持つ:迷ったら「お客様のためになるか」
2. 解像度が足りないときは、自分で手を動かして確かめる
3. 手戻りを減らすために、能動的に自分ごと化して仕様を確定させる

―次回の「GUNOSY AWARD 2026」ノミネート者インタビュー第2回もぜひお楽しみに。

※撮影場所:WeWork 渋谷スクランブルスクエア

投稿者 TanakaMiho