
2026年3月、株式会社イードが主催する「Media Innovation Conference 2026」が開催され、代表取締役社長の西尾さんが登壇しました。ニュースキュレーションメディアとして歩みを始めたGunosyが、なぜ今、メディア・グローバル・フィンテックを横断する多角化企業へと進化を遂げているのか。「Gunosyの多角化経営とこれから」と題した対談から、西尾さんが描く新時代の生存戦略を紐解きます。
中学生の原体験から、Gunosyグループ全体のトップへ
セッションは、西尾さんのユニークな経歴の紹介からスタートしました。 西尾さんはGunosyの創業者ではなく、自身が立ち上げたゲームメディア「Game8」をGunosyに売却し、グループ入りしたという異色の経歴を持っています。そのルーツは中学生時代に遡ります。当時、趣味で作ったトレーディングカードのウェブサイトが月に数百万アクセスを集め、広告を設置したところ、月に数万円の収入になったという経験が”自分が好きで公開したものに反響があり、人に喜ばれ、それが収益にもつながる”この体験は、今も私の原点となっています。

その後、大学在学中に起業して事業売却を経験し、その資金で2社目としてゲームエイトを創業します。わずか1年で月間1億PVへと急成長させる中で、エンジニアが西尾さん1人という状況に限界を感じ、事業の成長機会を最大化できる環境としてGunosyへのグループ入りを決断しました。
Gunosy参画後もゲームエイトは順調な成長を遂げ、事業の多角化が進む中でグループ経営への移行が必要となり、西尾さんがグループ全体の代表取締役社長に就任することになります。これについて西尾さん自身も「買収された側の出身者がグループ全体の代表に就任するのは、稀有なケースではないか」と語りました。
「Game8」のグローバル展開と、約1.2兆円の決済市場への挑戦
現在、Gunosyは事業ポートフォリオを「コアキャッシュ領域」「C/F積上げ型M&A領域」「高成長オプション領域」の3つに区分し、多角化経営を強力に推進しています。 会社のミッションについても再定義が進んでおり、創業時の「情報を世界中の人に最適に届ける」というものから、時代に合わせて「社会の歩みのほんの少し先を支えるインフラになるような企業群を目指す」という方向性へと進化していることが明かされました。

その成長を力強く牽引している事業の一つが、Game8の海外展開です。日本のコンテンツを英語圏向けにローカライズして展開するモデルで、今やグローバルのゲームメディアの中で5本の指に入る規模にまで成長しています。さらに、世界的なレビュー集約サイト「Metacritic」の評価指標に日本発のゲームメディアとして初めて採択されるなど、ゲーム業界における世界的な影響力も高まっています。
また、今後の大きな成長ドライバーとして発表されたのが「ゲーム特化の決済領域」への参入です。2025年12月に全面施行された「スマホソフトウェア競争促進法」の施行により、これまでプラットフォーム標準の決済手段が中心だった約1.2兆円とも言われる国内ゲーム決済市場が外部に開放されました。 Gunosyはメディアとしての圧倒的なリーチ力を生かし、合弁会社を通じてアプリ外決済サイト「S8 Shops」や「Game8 Store」を展開。西尾さんは「攻略サイトを見ているユーザーに他のゲームの広告を出すよりも、今プレイしているゲームをお得に決済ができる動線を作ることで、ユーザー、ゲーム会社、自社の三方良しの実現に繋がる」と、メディアの強みを活かした独自の戦略を語りました。
インドのデジタルバンク「slice」の爆発的成長と、メディア企業の可能性
そして、株主からも最大の期待を集めているのが、高成長オプション領域に位置づけるインドのデジタルバンク「slice」への投資です。 Gunosyが外部筆頭株主として支援しているsliceは、当局の厳格な認可を経て民間銀行としてのライセンスを取得しました。インドでは民間銀行が50行程度しかない中で、月に40万口座が開設されるという爆発的な成長を続けており、「インド初のデジタルファーストな銀行」としての地位を確固たるものにしつつあります。

セッションの結びに、西尾さんは参加したメディア関係者に向けて「長くやり続けた先にチャンスがある」と力強いメッセージを送りました。「メディアそのものを進化させることは当然やりつつ、皆さんのケイパビリティ(能力や強み)の中にあるものをどう生かすと新しい成長機会が取れるのか。それがもしかしたら参考になるかもしれない。 今回参入したゲーム決済市場も、当社が長くゲーム業界に向き合い続けたからこそ掴めたチャンスでした。」
ニュースアプリから始まり、ゲーム決済やインドの銀行にまで事業を広げているGunosyの挑戦は、まさに「自社のケイパビリティの最大化」を体現しています。私たちはこれからも既存の枠にとらわれることなく、あらゆる情報を最適化し、「社会の歩みのほんの少し先を支えるインフラ」を目指して新たな価値創造に挑戦し続けます。
